一途に IYOU〜背伸びのキス〜
和やかな空気が一転。
ピリって電気でも走ったみたいだった。
まぁ……パパはそう言うだろうな、とは思ってた。
けど。
『一緒に行く。いいじゃん。結婚前提なんだから』
『いいわけないだろう! 大体、葉山くんの出張はいつになるか分からないんだぞ?!』
『高校はちゃんと卒業するもん!
……椋ちゃんが、そうしろって言うから』
『大学はどうするつもりだ』
『それは、パパとちゃんと話し合えって……』
『咲良。着いていきたい気持ちはよく分かる。
でも、新しい土地で大学生活を始めるのは、簡単な事じゃない。
だったら四年我慢してここから通った方が……』
『四年我慢して?! パパだったら絶対我慢できないじゃん!
こないだの1週間の出張だって、泣きそうな声で毎晩ママに電話してきてたの知ってるんだからね!』
『それは……っ、だったとしても、パパはきちんと1週間の出張は乗り切っただろう!』
『たかが1週間を乗り切るのにも必死で涙声だったパパに“四年我慢しろ”とか言われたくない!
それに、パパがあたしの立場だったら絶対に……』
『――咲良』