一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「別に、今すぐ結婚させてくれって言ってるわけじゃないんだよ?!
“結婚を前提に”なんて挨拶するのだって、誠意の表れだし!
しかも、もともと反対するつもりなんかないくせに、そんな条件つけるとかおかしいって!」


机をダン!って叩いたら、後ろで「うぉっ」って声がした。

振り向くと、櫻井があたしを見下ろしてたけど……かなり驚いてるみたいだった。


「びびったー。なに、結婚とか」
「櫻井、失恋の傷口に塩塗りこまれたくなかったら、何も聞かずにこの場を去った方がいいと思うけど」


みっちゃんが言うと、櫻井がハハって笑う。


「いや、もう立ち直ってるし」
「え、まだちゃんと振られて2、3日しか経ってないんじゃないの?」
「そうだけどさー。でもその前に咲良が葉山さんしか見えてないのは分かってた事だし。
気持ちに区切りつける時間は長すぎるくらいあったしな。
それに、葉山さんは俺から見てもいい男で……それがデカかったんだと思う」
「あれ。今まで頑なに葉山さんの名前言わなかったのに。
なんかあったの?」


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