一途に IYOU〜背伸びのキス〜


みっちゃんに聞かれて、櫻井と顔を合わせる。
櫻井は目を伏せて微笑んだ。


「土曜日、俺んとこに来たんだよ。
咲良と……葉山さんが」
「え……っ、まさか、咲良に無理やりキスした櫻井を殴りに?」
「違うし。逆だよ、逆。
頭下げられたんだ。自分がきちんとしなかったせいで悪かったって。
……でも、諦めてくれとは言われなかったけど」


そう言った櫻井に、あたしとみっちゃんの視線が一気に集まる。
だけど、櫻井はそれを待ってたみたいにヘラって笑った。


「嘘だって。普通、あんな誠実な態度でこられたら諦めるしかないし。
それに、咲良が幸せそうなら何も言う事ないだろ」
「……櫻井」


呟くみたいに呼ぶと、櫻井が元気な笑顔を向ける。



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