一途に IYOU〜背伸びのキス〜
ライバルの香り
男をつかまえておきたいなら、胃袋を掴め!とか、よく聞くけど。
本当にそれで椋ちゃんがあたしの隣にいてくれるなら。
あたしは、料理の鉄人にだってパティシエにだって、なんにだってなれると思う。
不器用だから、時間はかかるかもしれないけど。
椋ちゃんと一緒にいられるために使う時間だったら、いくら使ってもムダだとは思わないから。
それを、椋ちゃんが嬉しいって思ってくれるかどうかは分からないけど。
「よし。できた」
学校が終わって、ダッシュで買い物して。
椋ちゃんの部屋に忍び込んだのが、16時10分。
大きめのお鍋でグツグツ煮たのは、ビーフシチュー。
冷蔵庫には、たくさんの野菜を使ったサラダと、お店で買ったケーキも入ってる。
おいしいって有名のパン屋さんで買ったフランスパンも、キレイに切ったし。
忘れてる事がないか一通り確認してから、「よし」ってもう一度呟く。