一途に IYOU〜背伸びのキス〜


用意したのは、全部椋ちゃんの好物だ。

椋ちゃんからもパパからもバイト禁止令が発令されたせいで、プレゼントは買えなかった。
だから、せめておいしいモノを食べて欲しいなって思って。


「テーブルもちょっと飾ろっかな」


部屋にはあたしひとり。
それなのに、呟く言葉全部が、語尾に音符マークがつきそうなくらい浮かれてる。

まぁ、そんなのこの部屋にいればいつもの事だし今更気にしたりはしない。

あらかじめ買っておいた造花を、鞄から取り出す。

茎の部分を短く切って、花をテーブルの上にひとつひとつ散りばめていく。


バリとかのホテルって、よくベッドどかにいっぱいあるし。
写真でしか見た事ないけど。

あんな感じの完成予想図を頭の中で広げながら、造花を慎重に置いていく。


『遅くなると思う』

今朝、このテーブルで帰りの時間を聞いたあたしに、椋ちゃんはそう答えた。








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