一途に IYOU〜背伸びのキス〜


 ***


「先生、できましたー……先生?」


たまねぎのみじん切りを終えて声をかけたのに、先生は無反応。
隣を見上げてみると、先生の視線は窓の外に向いていた。

何を見てるんだろうって追ってみる。


「……サラリーマン?」


そこにいたのは、数人のサラリーマン。
人数的に、これから飲み会とかかな、とも思ったけど……。
そんな平和な雰囲気じゃなかった。

窓越しでもぴりぴりしてるのが分かる。
見ていると、サラリーマンのひとりが深々と頭を下げた。

頭を下げられたスーツのおじさんは、それを見て顔をしかめる。

よっぽどエライ人なのかな。
あんな、柔軟体操ですかって聞きたくなるくらいに頭を下げられても、横柄な態度をとってられるなんて。



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