一途に IYOU〜背伸びのキス〜
ほっとけばこのまま土下座とかしちゃうんじゃないかってくらいに頭を下げるサラリーマン。
見ていて、あまりいい気分じゃない。
「俺、自分の納得いかない事で頭下げるとか、絶対無理」
「……っぽいですよね。
あたしも無理だけど」
先生が、あたしの手からボウルをとって、みじん切りの出来を確認する。
サラリーマンたちは、とりあえず場が納まったのか、歩き出すところだった。
あのおじさん、許してくれたのかな。
「でも、すごいですよね。サラリーマンって」
「は? すごいって、自分の意志関係なしにぺこぺこ頭下げんのが?」
「そう」
「それのどこがすごいんだよ。
俺は、プライドとかねーのかって言いたくなるけど。
それに、おまえだってそんな事できないって言ったばっかだろ」
「自分ができないからこそ、それをできる人を尊敬するんじゃない?
会社とか家族のために、頭下げられる人はすごいと思う」