一途に IYOU〜背伸びのキス〜

「そうか？」
「先生はそんな立場になった事ないから分からないかもしれないけど……。
先生の会社の社員だって、会社を守るためにどんなに理不尽でも頭下げてたりすると思う」


多分、椋ちゃんも。
よく営業先を回ったりしてるし、部下がトラブルを起こしたりしたら、きっと一緒になって頭を下げてる。
椋ちゃんは、職場の人を見捨てたりしないから、きっと。


「先生、次は？　たまねぎ炒めますか？」


今日のメニューはハンバーグ。
いつもだったら、たまねぎなんか炒めないでそのままひき肉と混ぜちゃうところだけど。

手間を省くな！　とか怒られそうだから一応聞いてみる。


「いや、結構細かく切ったし、このままで……」
「……先生？」


急に黙り込むから、不思議になって見上げる。
またよそ見でもしてるのかなって思ったけど、先生はちゃんとあたしを見てた。