一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「おまえまだ16とか17だろ。
まだ早いんじゃねーの、そーいうの」
「あれ、意外と古風な考えなんですね。
でも、結婚を前提とした真剣なお付き合いだからいいんです。
っていうか、我慢できなかったし」
「……女がそーいう事言うな」
「だって、七年も片思いしてたんだもん。
もう、どうやっても欲しくて欲しくて、それでやっと手に入れたんだから。
我慢できなくても当然でしょ?」


こういうの、先生が言うとおり女が言うのってはしたないのかもしれない。
けど、想いが大きすぎて、幸せが全開すぎて黙っていられなくてついべらべらと疲労してしまった。


「それにしても、先生ってそういうとこ真面目なんですね。
意外でした」


話題を逸らそうとして笑顔で言ったけど、先生は黙ったままで、答える気はないみたいだった。

その後も、ハンバーグがちょっとこげちゃっても、プチトマトを潰しちゃっても、文句もチョップもアホも飛んでこなくて。
ちょっとおかしいな、と思いながら料理教室の終了時間を迎えた。




< 271 / 342 >

この作品をシェア

pagetop