一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「どうしたの?!」
「仕事がこの近くだったんだけど、早く終わったから寄ってみたんだ。
今終わったところ?」
「あ、うん。
……待っててくれたの?」
「10分くらいだけどな。帰ろう。送っていく」


微笑む椋ちゃん。
待っていてくれたって事が嬉しくて胸がきゅーんって鳴る。


「椋ちゃんちに寄ってから?」


椋ちゃんの目の前まで歩いていって、スーツの裾を掴みながら見上げる。
椋ちゃんは、困り顔で微笑んであたしを見た。


「そうしたいところだけど……。
2日前にきたばかりだろ。あまり頻繁にうちに来ていても社長もいい気しないだろうから」
「そんなの気にしなくていいのに。
今までだって、ほとんど毎日あたしが押しかけてたじゃん」
「けど、付き合い始めたからには、社長には父親として別の心配があるハズだから」
「それは、そうかもしれないけど……」



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