一途に IYOU〜背伸びのキス〜


不思議になって声をかけると、椋ちゃんがわずかに顔をしかめる。
それからゆっくりと手をあげて、あたしの首に触れた。


「これ、誰につけられた?」
「……え」
「――咲良」


呼んだのは椋ちゃんじゃない。
振り向くと、腰に白いエプロンを巻いたままの先生が歩いてくるところだった。

なんの用だろう、とも思ったけど。
その前に、名前を呼ばれた事が初めてで落ち着かなかった。

いつもは、“おまえ”とかでしか呼ばないくせに、なんで……。


「……なに? 変態男」


さっきの事を思いだしてイヤミを混ぜながら聞くと、近づいてきた先生が、絆創膏を2枚差し出した。
わけが分からなくて見上げると、意味深に笑った先生が言う。

――あたしじゃなくて、その後ろにいる椋ちゃんを見ながら。


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