一途に IYOU〜背伸びのキス〜
ガランとした部屋。
自分の身体の中からも同じ音がする。
椋ちゃんがまだ帰ってきてない部屋を見た途端、心からもガランって音がした。
ぽっかり穴が開いて、不安とか寂しさが溢れ出す。
どうしたんだろう……まだ、仕事?
今までこんな事なかったのに。
「あ、ケータイ……」
鳴り続けてる着信音にハっとして、カバンの中から取り出す。
椋ちゃんかもしれない。
そう期待して、サブディスプレイに表示されてる名前を見て……。
顔をしかめてから通話ボタンを押した。
『咲良! おまえ、今何時だか分かってるのか?! 今どこだ?!』
薄いケータイから聞こえてきてるとは信じがたい大声。
犯人はパパだ。