一途に IYOU〜背伸びのキス〜


椋ちゃん椋ちゃん言うのはやめておこうと思った矢先、先生がケンカを吹っかけてくるから、ついさっき我慢した分までムキになってしまう。


「でも、おまえの料理の出来なさには気づいてないだろ。
教室今月で辞めるらしいけど、そのレベルじゃ誰も嫁にもらってくれねーからな。
サラダ作るのがやっとの女なんか」
「先生がサラダくらいしか作らせてくれなかったんでしょ!
先生が教えてくれれば私だってラザニアとかオーブン焼きとか、そういう洒落た料理だって作れたもん!」
「一回揚げ物教えたら油が怖いだの言ったのはおまえだろ!
それに、色々教えて欲しいなら教室続ければいい話だろ」


真顔で言われて、思わず黙る。

まさか、あたしに教室続けさせるためにちゃんとした料理教えなかったの?
一瞬、そんな風にも思ったけれど、いやいやまさかと考えを振り落す。

この教室を続けたところで、先生にとってはなんの利益もないハズだ。
だって、パパが頼んで無償でしてもらってるって話だし。

先生も、人に教える事を経験するために短期間だけオーケーしたって聞いてる。
つまりはお互いにボランティア状態だ。


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