一途に IYOU〜背伸びのキス〜


本当の事だとは言え、せっかく褒めたのに。
いくら待っても返事がないから痺れを切らして見上げると、先生は私とは逆の方を向いて、口元を手で覆っていて。

気持ちでも悪いのかと思って覗きこむと、大きな手で顔全体を覆われて押さえつけられた。


「なに……っ、ちょっと!」
「うるせー。今こっち見るな」
「なんで! ……あ、メール」


ポケットで震えたケータイを取り出すと、椋ちゃんからだった。
迎えにきてるからって内容に驚いてから……心配させてるんだって分かって申し訳なくなった。

仕事があるのに、あたしの事で余計な仕事増やしちゃうなんてと罪悪感を感じながらも、正直にぶっちゃければ半分は嬉しくて。


「先生、サラダ、持って帰ってから食べるからもう帰るね。
後片付けも済んでるし」


作った料理を持って帰れるようにっていつも持ってきてるタッパーに作ったサラダを入れて、サラダの乗っていたお皿を綺麗に洗って水滴をふき取る。

そしてやり残した事がないかを確認してから、先生に挨拶しようと振り返った瞬間。
腕を引かれて強引に抱き締められた。




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