一途に IYOU〜背伸びのキス〜


ぶつかるようにして先生の胸に押し付けられて、文句を言おうとしたところをそのまま力強く抱き締められる。

何が起こったんだか分からずに少し呆然としていたけれど、椋ちゃんとは違う感覚にハっとして胸を押した。


「なに……また嫌がらせ?! 離してってばっ」


ぐいぐい押すけれど、両腕を折りたたんだ状態で抱き締められているせいで全力で押し返す事ができない。

ぎゅうっと潰すのが目的なんじゃないかってほどの先生の腕に囲まれながらも必死にもがいてもがいて……息がきれる。


「苦しいってば……っ! 離して、もう……っ」


あたしの要望を聞き入れてくれたのか、いい加減暴れるあたしを面倒に思ったのか、先生はやっと腕を緩める。

だから離れようとしたけれど……。
腕は緩まってはいるけれど、私の背中には回ったままだから、一定距離から離れることができなくて。




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