一途に IYOU〜背伸びのキス〜


もう一度、離してって文句を言うために見上げたあたしの視界に映ったのは、目の前にある先生の顔だった。
キスされる……?!

そう思って先生の股に膝蹴りを入れた直後、後ろからすごい力で抱き寄せられる。
あたしの膝蹴りがクリティカルヒットしたからか、先生はそのままその場にしゃがみ込んであたしを睨んだ。


「おまえは……っ、なんで何度も同じとこばっか狙うんだよ……」
「先生が変な事ばっかりするからでしょっ」


そう怒鳴ってから、私を後ろから抱き寄せたままでいる椋ちゃんを見上げた。

怖い顔をしている椋ちゃんがどこから見ていたかは分からないけど、怒っているのは確実だった。


「椋ちゃん……ごめんなさい。でも、あれは先生のただの嫌がらせで……」


必死に伝えようとしたけれど、椋ちゃんの視線は先生に向けられたままであたしに移る事はなかった。



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