一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「咲良に他の男が触るのは」と、苦しそうに微笑む椋ちゃんに、もうなんか胸が破裂するかと思った。
そんな風に私を想ってやきもち焼いてくれるなんて……。

逆の立場だったら絶対に嫌だし、椋ちゃんにそんな思いをさせている事が心苦しくもあるから、先生絶対許せない!って気持ちももちろんある。

だけど……嬉しい気持ちと、やきもち焼いて不貞腐れてる椋ちゃんが可愛いって気持ちも大きくて。

ひとりでその想いを噛みしめるだけじゃ足らなくて、椋ちゃんの方に身を乗り出した。


「咲良? ……おい、無理だろ、いくらなんでも……」


驚きながらそんな事を言う椋ちゃんの言葉なんか聞かずに、運転席に乗り移る。
向かい合うようにして椋ちゃんの上に乗るとそこまではきつくないけれど、背中にハンドルが当たっていた。

それに気づいた椋ちゃんは、呆れたように笑いながら席を少し下げてくれる。

上に跨っているあたしと椋ちゃんの距離は、30センチないくらい。
そんな至近距離で、椋ちゃんは仕方ないなって顔で笑う。


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