一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「なんだよ……なんの真似だ、おまえ」
「見ての通り、土下座です」


頭を下げたまま答えると、先生はしばらく黙っていた。
そして、聞く。


「誰にでもペコペコ頭下げたりできないって、いつか話しただろ。
そん時おまえも俺と同じ意見だったよな? 頭なんか下げられないって」


思い出すのは、いつか、この教室の前で繰り広げられていたサラリーマン劇場。

あの時、偉そうな態度しかとらないような人に頭を下げ続けているおじさんを見て、自分だったら考えられないって言った事はきちんと覚えていた。

本当にそう思ったから。


「うん。でも今は自分で考えて納得してしてるから」


そう答えると先生はため息をつく。
頭を下げているから先生の顔は分からないけど、多分、不貞腐れているような顔をしているんだろうなって想像がついた。




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