一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「土下座までして守りたいのは、彼氏の事か? それとも父親の会社?」
「正直、あたしは会社とかよく分からない。想像もつかないし。
でも、椋ちゃんとかパパとか、あたしの大事な人が大事にしてるモノだから。
だったら、あたしのできる限りで守りたい」
「……俺みたいに気に入らないヤツに頭下げてまで?」
「それで大切な人が守れるなら、こんなのなんでもないよ」
そう言ってから……すぅっと息を吸い込んだ。
「先生、お願いします。
もうあたしに構わないでください」
先生は何も答えなかったから、数十秒間そうしていたと思う。
やめろって言われても、先生が分かったって言ってくれるまではこうしてるつもりだったから、覚悟はあった。
「椋ちゃんは今まで頑張ってここまできたのに……あたしの事なんかで大事な仕事潰したくないんです。
きちんとした環境で、全力で仕事して欲しいんです。
だから……お願いします」