一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「立てよ。女に頭下げさせるなんて気分がわりー」
「……俺様自己中なのに?」
「否定はしないけど、土下座させる趣味はねーよ」
「でも、人の苦しんだ顔が好きなんでしょ?
だからあたしにあんな意地悪ばっかりしてたんじゃないの?
いじめっ子の先生には、土下座なんて大好物だと思ってたのに……」


そう呟くと、先生が顔を歪めて笑ってから苦笑いを浮かべた。


「確かにおまえにとってはただの嫌がらせだったろうけど、別にいじめたくてそうしてたわけじゃねーし」
「ああ……そっか。元からの性格って事?」
「おまえは本当に俺に気を使わないよな。
……そういうところが嫌いじゃない」


目を伏せて気まずそうに言う先生に驚きながら「絶対嫌われてると思ってた!」と言うと、「うるせーな!」と返される。

ただ聞き返しただけなのに怒鳴るとかいう仕打ちをしてくるくせに、嫌いじゃないって言われても信んじがたいけど……先生が言うならそうなんだろうと思う。

嘘をつく人じゃないのは知っていたから。


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