一途に IYOU〜背伸びのキス〜

「本当に、もう意地悪しない？」


確かめるように聞くと、先生は「しない」と答えた。


「絶対に？」
「しつこい」


よかったと安心して笑うと、先生はそんなあたしをじっと見た後、ふっと微笑む。

先生は割と笑うけれど、いつもは意地悪く笑ってたり、変なツボに入って笑ってる感じだったから、初めて見るような柔らかい微笑みに驚く。


「おまえたちは似たものカップルだな」


どこもかしこも似てないと思う。
だから訳が分からなくて顔をしかめていると、先生が続ける。


「おまえの彼氏、おまえがくる少し前にここにきた」
「え……」
「おまえに手を出さないで欲しいって、おまえとまったく同じように土下座してた」
「え……っ！？　椋ちゃんに、土下座させたの……？！　ひどい！」
「俺がさせたんじゃなくて、あっちが勝手にしたんだよ。
自分には咲良を守る手段がこれ以外ないって」


そう言って軽くため息をついた先生の顔が、やけにスッキリとしている事に今更気づく。
だから笑顔があんなに柔らかく見えたのかもしれない。