一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「正直、すぐ頭下げるサラリーマンって情けねーってずっと思ってた。
けど、俺なんかに頭下げてまでおまえを守ろうとしてる姿は、なんつーか……悪くなかった。
本気を見せつけられたっつーか、男気を見た気がして。
俺は嫌がらせみたいな事しかできなかったから、素直に負けたって思った」
「負けたって、椋ちゃんに? 何で負けたの?」
何の勝負だとしても椋ちゃんが勝つに決まってるけど、とは言わずに聞くと、先生は少し黙ったあと、言わねーと笑った。
「とにかく、彼氏にあれだけの事させた以上仕事はちゃんとするし、彼氏に嫌がらせもしねーから安心しろ。
俺だって今度の仕事にかけてるし」
「まぁ……そうだよね。先生、仕事に対しては熱心そうだし」
「他だってちゃんとしてる。おまえが知らねーだけで」
「ああ……掃除とか? ずっと思ってたけど先生潔癖症だよね」
ちゃんとしてんのはもっと他にもある、と笑った先生が、笑顔を残したまま私を見る。
そして意味深に微笑んだ。