一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「そりゃあ、パパがびしっと言ってくれればよかっただけの話かもしれないけど……パパの力は借りたくなかったんだもん。
確かにパパに押し付けられた料理教室のせいではあるけど」
「……なんだ咲良、パパを怒っているのか」
「怒ってはないけど、元を正せばパパがあの時強引に料理教室通わせなければよかっただけの話だとは思ってる」
はっきりと言うと、パパの眉尻がまた下がる。
完全にハの字だ。
「パパだって咲良を土下座させたくて通わせたわけじゃ……」
「とにかく、責めてるわけじゃないからそんな顔しないで」
パパの眉毛が垂直にならないうちにと釘を刺してから、話を続ける。
「パパのせいじゃなくてあたしのせいだと思ったから、自分でできる限りなんとかしたかったの。
椋ちゃんにも迷惑かけちゃってたから。
それに、あたしの頭なんて下げたところでなんでもないもん」