一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「だけどな、咲良。パパは自分勝手でわがままな咲良が頭を下げたなんて考えるだけでもう涙が……。
パパを泣かせないでくれ」
「それはあたしのせいじゃなくて、パパの過保護のせいでしょ。
それにね、パパ。手を貸すとか言うけど、パパの頭には社員全員乗っかってるんだから、パパは簡単に頭なんか下げちゃダメでしょ」
「咲良……」
「あたしがもしも悪い事したとかだったら下げてもらわないとかもしれないけど。
それ以外はいくらあたしのためでも、パパに頭を下げさせるわけにはいかないんだから、パパも簡単にそんな事言わないで」
「いい?」と聞くと、パパは呆然とした後、「パパを泣かせないでくれ……」と声を奮わせた。
こんなおじさんの頭の上に何百人って社員が乗っかってるなんて信じがたくて、眉間のあたりを押さえるパパを思わず笑ってしまう。
「咲良、土下座したの? やっぱりパパの子ね」
キッチンにいたママが、パパとあたしの前にお茶を置きながらふふっと笑う。
どういう意味?と聞いたあたしに、ママはパパの方をちらっと見ながら答えてくれた。