一途に IYOU〜背伸びのキス〜
椋ちゃんは顔をしかめながら近づいて、あたしがよつんばいになってる前にしゃがんだ。
「大丈夫か?」
「あ、うん……ちょっと、走りすぎただけだから……」
「本当に加減を知らないよな、咲良は」
やれやれって感じのため息。
口調だって呆れてるのに。
椋ちゃんが優しく微笑むから、嬉しくて胸がキュって鳴く。
「今コーヒー入れたところだけど、飲む?」
「うんっ」
笑顔で頷くと、ぽんぽんってあたしの頭を撫でた椋ちゃんが立ち上がる。
ふわってあたしを包んだ空気。
いつもの椋ちゃんの匂いがした。