一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「ねぇ、パパ。
パパは、ママと立場が逆だったとしても、ママに手を伸ばせた?」


渡された鍵が、チャリって音を立てて手の中に落ちる。
パパはちょっとびっくりした顔をした後、ふっと笑った。


……あ、シワ。
いつもママにでれでれしてるから、パパは年齢からしたらシワが多い。

笑いじわだから幸せそうでいいけど。


「難しい質問だね。
男はどうしても自分の立場を気にするから」


それだけ言って、黙っちゃったパパ。
その態度が意外で、立ち上がってパパの前に立つ。

ロビーに社長がいるせいか、通る社員がみんなチラチラ見てきてて居心地が悪い。







< 66 / 342 >

この作品をシェア

pagetop