一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「分かってる。そんな事。
でも、ちょっと落ち込んでる娘の背中を押すくらいしてくれてもいいじゃん」
「突っ走りっぱなしの咲良が落ち込んでるなんて珍しいな。
なにかあったのか?」
「……パパ。こんなところで娘相手に長話してていいの?
仕事、あるんでしょ」


うっかり「落ち込んでる」なんて口走っちゃったけど……。
パパに話すのも面倒そうだ。

そう思って誤魔化すと、まんまと引っかかったパパが、腕時計を見て、「ああ、そうだな」って言う。


「じゃあ、気をつけて。
20時には帰れると思うから」
「うん」


そう言って、背中を向けたパパ。
だけど、数歩歩いてから、あたしを振り返って微笑んだ。









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