一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「問題山積み……っていうか、ほとんど直しようがない事だし」


家の鍵をカバンにしまいながら、ぶつぶつ呟く。

パパとのやり取りを聞いていたらしいガードマンに最敬礼されて、気まずくなりながら会釈して会社を出て。

数歩歩いた時、すれ違い様に名前を呼ばれた。



「咲良?」
「え……あ、椋ちゃん」


振り向いた先にいたのは、スーツ姿の椋ちゃん。
椋ちゃんも驚いてるみたいだった。


「なんでこんなところに……社長に用事か?」

「あ、うん。
家の鍵もらいにちょっと……椋ちゃんは、営業の帰り?」
「ああ」


チラチラ感じるのは、通り過ぎていくサラリーマンたちからの視線。
それはさっき感じたモノとは違う。

“社長の娘”としてじゃなくて、“女子高生とスーツ”って組み合わせに向けられてるモノ。

援交だとか、出会い系だとか。
多分、そんな変な目で見られてる。

それは仕方ないかもしれないけど、でも、こんなカッコいい椋ちゃんがそんな事するわけないのに。

目悪いんじゃないの。








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