一途に IYOU〜背伸びのキス〜


苦笑いしながらもカバンを持って、教室を出る。

ふわふわにした髪が歩くたびに揺れて、気持ち的にも感覚的にも少しくすぐったい。

放課後の廊下には、日中の騒がしさはなかった。
吹奏楽部の演奏と運動部のかけ声が、遠くの方でコラボしてるだけ。


「大人っぽくなりたいって、例の女の事気にしてるの?」


玄関で靴を履き替えてると、みっちゃんが聞く。


「それもあるけど、もともと年の差もあるし。
あたしは全然気にしないけど、もし椋ちゃんが気にしてるとしたら、少しでも気にならなくできたらいいなって思って」
「健気だね。片思いのくせに」
「……今の結構グサっときたんだけど」
「ああ、ごめんごめん。
悪い意味で言ったんじゃなくて、羨ましいって意味」








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