一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「確かにね。でも、27の男だよ? 普通に性欲はあるでしょ。
それなのに咲良に合鍵渡したりして……。
何考えてるんだろ」



『これ、俺の部屋の鍵。
来月から一人暮らしする事になったから』


椋ちゃんにそう言われたのは、あたしが高校に上がった時だった。


『え、もらっていいの?』


渡されたシルバーの鍵を見ながら言うと、椋ちゃんは笑って。
『ピッキングされて鍵壊されると困るから』って言った。


その日から大事にしてきた鍵は、なくさないようにケータイのストラップにした。

絶対に外れないようにって、ワイヤーを二重にして作ったビーズのストラップ。
そして、何よりも大事な、その先にある鍵。

誰も持ってない、世界に一個だけのストラップを、あたしはすごく気に入ってる。








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