一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「そしたらあたしだって……。
すんなり、諦めたかもしれないし……」


そんなわけ、ないのに。
こんな時に限って、素直な気持ちが言えない。


だって、あたしの正直な気持ちを言ったら、椋ちゃんに迷惑がかかるのが分かってるから。

“やだ!”なんて言ったら、椋ちゃんが困るのが分かるから。


あたしは、こんな場面になっても。
椋ちゃんに嫌われたくないって、そればかり。

苦しいくらい、あたしの中、椋ちゃんの事ばっかりなのに……。


「椋ちゃんが言ってくれないから……あたし、知らなくて、すっごい邪魔しちゃったし」
「……ごめん」


謝らないでよ……椋ちゃん。

認めないでよ……っ。





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