アナタがココにいてほしい

◆雪が溶けて春がきた

普段から大して成績の良くなかったユキだけど
なんとか二流程度の大学には入学できた。

恋人もいなくて
勉強するヒマなんていっぱいあったのに二流大学だなんて
笑われちゃうかもしれない。

ユキは大学生になれたことが嬉しくて
二流だろうがなんだろうが関係なかった。

大学ではきっと
素敵な恋人を探すんだって
ユキはときめいた。

・・・

春になって
桜の下を歩いて大学へ入学した。

サークルの勧誘にはびっくりした。

次から次へと声をかけられて
なんとなく
音楽が好きだという理由だけで
軽音楽サークルに入った。

楽器なんて出来ないのに
カッコイイ先輩に
それでもいいよなんて言われて
なんとなく。

ユキがハルと出会ったのはその時だった。

先輩に連れられて部室へ入ると
ハルはギターを弾いていた。

タバコの臭いと、なんの臭いだろう。

あとから知ったけど、楽器特有の臭い。

沢山の楽器と楽譜とCDと漫画。

今にも崩れてきそうなボロボロの壁。

そこに寄りかかりながらハルは
何気なくポロリと指でギターの弦をはじいていた。

次の瞬間
ユキはすっかり恋に落ちていた。
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