ONLOOKER
「ええと」
だが、気の置けない友人でもある彼女、伊王恋宵(いのうこよい)の姿を見て、夏生は無表情で言葉を選んでいた。
まだ後頭部をさすりながら、聖が言う。
「恋宵ちゃ……や、准乃介先輩は、なにしてんすか……?」
「ちょっとねー、面白い怪我の仕方しちゃって」
「小さい孫に介助されるおじいちゃんみたいですね……」
「む、小さいは余計にょろよう」
恋宵は口を尖らせたが、その姿は、説得力もなにもあったものではなかった。
180センチを大きく上回る長身の彼、沖谷准乃介(おきたにじゅんのすけ)に対して、恋宵の身長は150センチに届かない程度しかない。
そんな大人と子供のような身長差で、恋宵が准乃介に肩を貸して歩いていたのだ。
「でも紅を怒らせたのは夏生と聖だから……元を正せば君たちのせいだよ?」
「准先輩が持つとね、落ちるところが高いから……威力が倍増するにょろよ」
「すいませんちょっとよくわかんない」
恐らくきちんと説明する気などないのだろう。
二人も、准乃介の引き摺った右足と申し訳なさそうな紅の表情で、なんとなくのことは察している。