ONLOOKER


疲れの滲んだ声を上げた聖に、夏生が眉を潜めた。
結局サボりの件はうやむやにして、紅となにやら話していたらしい。


「ちょっと聖遊んでないで聞いて。」
「遊んでない! むしろ准乃介先輩に遊ばれてる!」
「はいはいかわいそーに」
「あ、俺本当に可哀想」
「入学式が終わったあと、特待生との顔合わせがあるって。准乃介先輩、時間は大丈夫ですか?」
「うん、ちょっとならへーき」


ちょっと、と手振りをつけた准乃介は、指まですらりと長い。
彼は不思議な雰囲気と物腰の柔らかさと、父親の教えらしい徹底したフェミニズムも相まって、若手モデルとしては女性に絶大な人気を誇っている。
おかげで最近は本業の他に、芝居やバラエティ出演にも引っ張りだこらしい。

本来なら授業に出ることもままならないほど忙しいはずだが、大学卒業までは学業優先、という本人の希望らしく、仕事のために授業を休むことは月に一度あるかないか、という程度だった。
だがその分、学校が終わればハードスケジュールが待っている。

それは聖も同じで、そして、にょろとかにゃあとかいちいち語尾の跳ねる恋宵も、実はそうなのだ。

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