ONLOOKER
「あ、恋宵ちゃん、閉会式のトリ歌うんだよね」
「うん、でも時間的には余裕にょろよ? 新入生はそのあと教室戻って説明とかあるでしょ?」
彼女が現役女子高生シンガーソングライター、という近頃では特に珍しくもなんともない売り文句でデビューしたのは、一年ほど前のことだ。
それ以来Ino(イノ)は、小柄な体からは想像もつかない圧倒的な演奏力と歌唱力で、歌姫の名を欲しいままにしている。
ちなみに「いいなあ、俺も最前列で聴きたい」なんて呑気なことを言っている聖は彼女のデビュー前からのファンで、公式のファンクラブにまで入っているほどの熱の入りようだ。
会員番号は恋宵の両親が一番と二番、そして三番が聖である。
そんな彼女は今日の入学式の閉会式で、軽音楽部の演奏をバックに一曲歌うことになっていた。
新入生を歓迎する意味で、歌や音楽が披露されるのだ。
こういったステージは一年を通して何度も設けられており、歌や演劇やダンス、歌舞伎や落語なんてものまで発表される。
「じゃあ閉会が三時だから……三時半には生徒会室にいられるな?」
「そうですね」
「特待生って定員二人だっけろ? 競争率高かっただろうねえー」
「じゃあすげー頭いいのが来るってことっすかね? えー超カタイの来たらどうしよー」
「面接もあるんだから、社交性は問題ないんじゃない」
どうしよう、なんて言いながら顔は笑っている聖に、夏生が言う。
事務的な連絡が終われば、話題が向くのは自然、生徒会に新しく入ってくるという、特待生のことだった。