ONLOOKER
後ろを歩く先輩に振り返って、夏生が言った。
階段の途中なので准乃介の方が三段ほど下にいるが、それでやっと夏生が彼を見下ろす形になっている。
「佐野真琴、いましたね」
「あー、いたね」
「え、まじ? 俺見えなかったっす」
特待生だというのが事実だとしても、准乃介の得た情報がデマで本当は一般入学だとしても、どちらにせよかなりの大物だ。
例えば噂はあくまで噂で、彼が生徒会に入るという話が嘘だとすると、生徒会としては多いに問題だった。
いくら夏生や紅が悠綺の中では圧倒的な存在だとはいえ、相手は超人気俳優であり、知名度でいえば明らかに劣る。
だがここでは、そんな彼でも一介の生徒にすぎないのだ。
この学校で、一生徒の知名度が、彼らと並んでしまっては困る。
悠綺高校の生徒会は、絶対でなければいけない。
何者にも侵害されてはいけないのだ。
「ま、そんなことは」
誰かが呟いた。
「すぐにわかるでしょ」