ONLOOKER
「よお。来たな」
薄く色のついたレンズ越しに、流し目を寄越す。
深い赤のような色に染めた長めの髪は、大雑把に後ろに流されていた。
薄い茶のサングラスも、指先に挟まれた煙草も、グレーのシャツに白いスラックスという着こなしも、どこからどう見てもチンピラか、もしくはガラの悪いホストにしか見えない。
扉を開けた夏生ら五人を迎えたのは、そんな男だった。
荘厳な校舎、華奢で繊細で美しい細工の調度品。
そんなものには一切合切すべてが不似合いな、あまりにも浮いた男だ。
だが、一体どこで何を間違ってしまったんだか、彼はこの学校の教師である。
しかもこれで教師としてはなかなか有能であるのだから、見た目で損をしているとしか思えない。
彼――竹河居吹(たけかわいぶき)は、悠綺高校で数学を教えている。
そして生徒会顧問であり、さらにいえば、夏生たち二年A組の担任教師だ。
今朝教室でも会っている夏生たちは反応も薄いが、三年生の二人は、わずかに驚いてさえいた。