ONLOOKER


雑に促されて、二人の人物が立ち上がった。

この部屋には、扉を入ってすぐ右側に、生徒会室という場所には明らかに不必要な豪奢なソファーが置かれている。
応接スペースなんて言っているが実際のところ部外者立ち入り禁止のここでそう頻繁に応接なんてするはずもなく、もっぱら役員たちが寛ぐ場と化している。
入り口に背もたれを見せているそのソファーに、二人は座っていた。

五人がまず驚いたのは、うち一人の華奢さだった。
そもそも、一人だと思っていたのだ。

特待枠が二人というのが思い違いだったか、もしくは事情で一人が来られなかったか。
ソファーの背もたれから覗く後頭部は、一つしか見えなかった。

だが立ち上がったもう一人は、背もたれにすっぽり隠れてしまうくらい小柄で、少し力を込めて握れば折れてしまいそうに、全身が細かった。

女子生徒ならばまだそれもわかる。
現に恋宵だって、どこからその突き抜けるような歌声が出ているのかと驚くほどに細い。

しかし“彼”は、男子生徒だった。
制服に着られている感じはかろうじてないが、まるで中学生のような小柄さに、チェックのスラックスを一瞬疑ってしまう。
短い髪を揺らして、彼は小さく会釈をした。


「西林寺直姫です。……よろしくおねがいします」


低くはない、だがそれほど高くもない声。
くりんと大きな目は、ずっと落ちつかなげに伏せられている。

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