ONLOOKER


「た、たすけ……」


直姫が次に助けを求めたのは、聖の次に手近にいた人物――なんか似ていると言われたまさにその本人、夏生だった。

冷ややかな目付きに駄目で元々と、縋るような視線を送る。
すると、夏生は溜め息を一つ吐いた。
そして手を伸ばして、


「いてっ」
「いい加減にして、恋宵も」
「うにゃあ」


聖の頭でぱしんといい音を立てた手は、そのまま恋宵の額も軽く小突いて、それからまた胸の前で組まれた。
ようやく二人の手から開放された直姫は、目だけで夏生を見上げて、ぼそりと礼を言う。

だが、やはり直姫の選択が間違っていたのだろう。
夏生は直姫と恋宵の顔を目線だけで見比べると、心底意地が悪そうに、鼻で笑った。

ちなみにこの時は、見た目に表れてはいないが直姫も慣れないことに疲れて少々機嫌が悪かったということも付け加えておこう。

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