ONLOOKER
「ねえ、こんなのと一緒にしないでくれる」
「……こんなのってなんですか」
「鏡でも見なよ。制服間違えたの?」
直姫の目元が、ひくりと震えた。
わずかに眉を寄せる。
「間違えてませんけど。……先輩もしかして、女顔気にしてるんですか?」
「は?」
それまで冷たい無表情か、人を馬鹿にしたような顔しか浮かべていなかった夏生の頬が、直姫の一言で引きつった。
露骨に眉をしかめて剣呑な目付きで直姫を見る。
どうやら夏生の地雷を踏んだらしい。
それも、聖や恋宵の焦りっぷりを見ると、思いきり、力強く。
直姫は、大きな目を鋭く細めて夏生を睨み返した。
「そんなに睨むと綺麗なお顔が台無しなんじゃないですか」
「人のこと言えないでしょ。そっちこそ女みたいな見た目してるくせに」
「失礼ですね……自分は女です」
「……あ」
たっぷり五呼吸はあろうかという沈黙と、やっちまったとばかりと小さな声のあと、彼らの声にならない驚愕の声が、北校舎三階の廊下まで響いたとか、響かなかったとか。