ONLOOKER


「はい、これ。つーかこれって実行委員の仕事じゃないのー? なんで生徒会がこんなことまでしなきゃいけないかなー」
「手が回らないと言うんだから仕方ないだろう? パンフレットの用意が遅れていると、まさか今朝になって気付くなんて」
「これで全部にょろね? 准乃介先輩、玄関まで運ぶの手伝ってくれますかにゃ」
「ああ、いいよ、俺がやるから。女の子が重いもの持たないの」


小冊子がぎっしりと詰まった段ボール箱を抱え上げようとした小柄な後輩を、彼は手で制する。
そして、机の端に無造作に置かれていたヘアゴムとリボンを手に取って、にこりと笑って手渡した。


「それより、恋宵はこれ、よろしく」
「あ、そっか」


少女はそれを受け取ると、髪の長い女子生徒の方へ「紅ちゃん、髪!」と言いながら近寄って行った。

ちなみに段ボール箱を二つ軽々と持ち上げた男子生徒と、この男口調の女子生徒は同級生で、共にこの春から三年生だ。
二人とは先輩後輩の立場にあたるわけだが、気心知れた仲なのか、少女は彼女に対して畏まった話し方をすることはない。

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