ONLOOKER


おはよう、ごきげんいかが、なんて会話が、あちこちでされている。
上品で穏和でマナーの行き届いた立ち居振舞いは、温室育ち特有のものだろう。

「直姫、」と声をかけられて、紅の方へ向き直った。
真琴との話題は、午後の全校集会に移っていたらしい。


「昼休みにホールに来てくれ。一応、簡単な打ち合わせをしておこう」
「わかりました」
「それじゃあ、また」
「あたしこっちにょろ。あとでねー」
「あ、はい、また!」


南校舎は通称『門』と呼ばれていて、校舎自体が巨大な門のような形をしている。

一階の中心部分が、アーチ状にくり貫かれているのだ。
アーチの両側にある大きな石の階段は二階へ繋がっていて、南校舎の玄関はそこにある。

校門を潜った生徒はそのまま南校舎のアーチを通り、中庭を通って、自分の教室のある各校舎へと向かうことになっている。

東西の校舎の玄関は南校舎寄りの端にあるが、紅たち三年は、北校舎へ向かうために中庭を横切らなければならない。
これだけ広いと移動が面倒そう、というのが、直姫がこの学校に抱いた最初の感想だった。

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