ONLOOKER


「すあせん、遅くなりましたー」
「あれ、早いですね」
「早いですねじゃないだろう! どこに行ってたんだ、お前らは!」
「いやあ、ちょっと」


聖は苦笑いを浮かべて、夏生を見た。
夏生はほんの一瞬だけ目を泳がせると、手に持っていた紙の束を、紅に手渡した。


「生徒会入会届の偽造が九人、手違いで西林寺直姫と取り違えられたっていう女子が二人、実は特待生はもう一人いたと言いに来た生徒が六人」
「今回は理事長からの紹介状を偽造した人もいましたよ。なかなか思い付かないっすよね」
「まあ、透かしもないしサインも明らかに偽物で、バレバレでしたけど」
「あぁ……そうか、そういう時期だな……」


紅は二人の話を聞きながら、夏生に渡された用紙を捲って見ていた。
全員の身分証の写しを取っておいたようだ。

つまり二人が遅刻したのは、これらの不正の対応に追われていたから、ということらしい。
真琴は目を丸くする。


「え、そんな……十八人も?」
「今年はまだまだ……多い時で四十人近かったことがあったか」
「四十人!?」

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