ONLOOKER
「ああ……あとでやろうと思っていたんだった、ありがとう」
「今のうちにやっといた方がいいにょろよ、時間なくなっちゃう」
「あと十五分だからねー」
「そうか、もうそんな時間……」
後頭部の高い位置で手早く結った髪に、少女が背伸びをしてリボンを巻き付ける。
やりづらいから座って、と言われて腰かけたソファーで、ようやく一仕事を終えた溜め息を吐いてから、彼女は呟いた。
「……それより」
忙しさからうっかり放置していた事実に、やっと気付いたのだ。
勢いよくソファーから立ち上がる。
その拍子に長いポニーテールが、滑らかに揺れた。
少女は仰け反るようにして先輩の後頭部を眺め、扉を開けて出て行こうとしていた男子生徒は、ふと振り返った。
「それより?」
女子生徒は、窓のそばにあるやや装飾の控えめな扉に駆け寄り、ばん、と開いて、中を見る。
それを閉めると、今度は開け放されたままの窓から身を乗り出して、裏庭に視線を走らせた。
眉をぐ、と寄せた表情で、体を引っ込める。
そうして息を大きく、大きく吸い込んで。
「夏生と聖はどこに行ったあ───!?」
怒号とともに、思い切り吐き出した。