ONLOOKER
「ねえねえ、」
不意に、恋宵が声を上げる。
顔を向けると、彼女は斜め向かいの直姫がどこかを見ているのにつられたのか、窓の方を見ていた。
立ち上がって、開け放してある窓のサッシに手をかける。
そして振り返って、聖や真琴ににっこりと笑い掛けた。
「今年お花見行ったー?」
「俺行けてなーい。忙しくって……ここから見てるだけだなー」
「先週のはじめぐらいが綺麗でしたよね。僕それで満足しちゃって……」
生徒会室の窓からは、裏庭がちょうど視界いっぱいに見える。
そこには立派なソメイヨシノがずらりと植えられていて、春になると満開の桜がそれはもう見事に咲き誇るのだ。
だがそれも先日までのことで、五月にはいった今は、傷みかけの花びらが、芝生に濃いピンクブラウンの絨毯を作っていた
きっと下から見上げても、そこまでの迫力はもう感じられないだろう。