ONLOOKER
「紅ちゃんはー?」
「、えっ?」
恋宵に呼ばれて目を覚ました紅が、ぱちりと瞬きをする。
話半分にしか聞こえていなかったようだ。
准乃介に言われて、まだ眠そうな口を開く。
「お花見だって」
「ああ、お花見……うちの庭の八重桜が、ちょうど見頃だ」
「いいにゃあ……あたしなんか先週いっぱい、PV撮影で沖縄行ってたにょろよう」
今頃の沖縄といえば、こちらの夏頃の気温とそう変わらないだろう。
ちょうど桜のピークを見られずに、しかも一人だけ夏まで先取りして、春を満喫できていない気がするのが不満らしい。
「全部散っちゃう前にみんなでお花見しようよー、ね、夏生!」
「は?」
ちょうど休憩室から出てきた夏生に振り向いて、恋宵は唇を尖らせる。
夏生は怪訝な顔をしたが、恋宵が裏庭を眺めていたことに気付いて、行った。
「いってらっしゃい」
「にゃんで!?」
「忙しい」
「嘘言わにゃいのー」
放課後生徒会室に集まってやったことといえば、夏生はすぐさま仮眠、紅も居眠り、あとは春の新作チョコレート各種の試食大会だ。
これ以上に暇な午後があるだろうか、という感じである。
それも、入学式が終わってから、ずっとこうなのだ。