ONLOOKER
「裏庭でいいからお花見しようよ、ね、ひじりん」
「お、いいね!」
「そんなのここから眺めてればいいでしょ」
「だめ、下降りてみんなでお弁当食べるにょろ」
准乃介と紅のほうに目を移すと、二人はやれやれ、というふうに苦笑いを浮かべていた。
どうやら、恋宵のこんな我が儘はいつものことらしい。
裏庭に下りて花見をしたいなんてかわいい我が儘だが、食い下がる恋宵に夏生が少し困ったように眉を動かす姿は、見ていて面白い。
結局却下はしきれなかったようで、数分後には、恋宵がにこにこと笑顔でいる横で、夏生は眠気覚ましにコーヒーカップを傾けていた。
「じゃあ、明日の放課後!」
「ずいぶん急だねえ」
「だって早くしないと葉桜になっちゃいますにょろ。紅ちゃんもお弁当作ってくれる?」
「構わないが……」
「放課後じゃあ、そんなに長いこといられませんね」
それでもいいと、恋宵はご機嫌で笑っていた。