ONLOOKER

***


そして、翌日の放課後。
悠綺高等学校北校舎のさらに北、裏庭には、明るい恋宵の声が響き渡っていた。


「じゃあん、お弁当はあたしと紅ちゃん担当にょろよー」


花びらが落ちて薄紅色がまぶされた芝生に広げられたのは、レジャーシートではなく、大きなござだ。
聖が茶道部から借りてきたらしく、「なんか風流ってかんじでしょー」なんて笑っていた。

確かに、若草色の芝生に色の濃くなった桜の花びら、その上に模様の織り込まれたござを敷いて花見というのは、なかなか乙なものだ。

そして、七人が広々と足を伸ばせるござの中心には、大きなタッパーと重箱が、一つずつ置かれている。
“弁当担当”の恋宵と紅が、家から持ってきたものだ。

まず蓋が開けられたのは、紅の重箱だ。
自宅の台所で使用人らに手伝ってもらいながら作ったというそれは、彩りもバランスも量も、良い意味で至って普通のものだ(そう直姫が呟くと、准乃介がぼそりと「材料にどんだけ金かけてるかは、聞かない方がいーかもね」と言った。彼の金銭感覚は、意外と庶民派寄りなようだ)。

一方、恋宵が持ってきたピンク色の大きなタッパーの中身を見た時、彼らは唖然とした。

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