ONLOOKER


「えっと、……す、すごいですね」
「うん……スゴイよ、スゴイけどさ……」


目を泳がせながら言葉を濁す聖に代わって言ったのは、夏生だった。


「卵焼きとウインナーしか入ってない」


夏生の批判ともとれる(おそらく本人はそのつもりだろう)言葉に、恋宵は当然のように答える。


「だって卵焼きとタコさんウインナー好きなんだもん。いーじゃにゃい、嫌いじゃないでしょ?」


聖はとても何か言いたげに恋宵を見たが、満面の笑顔でそう言う彼女に水を差すようなことはできず、結局はただ「うん……卵焼き、大好き」と言うことしかできなかった。


「た、タコさん、群れてます」
「しかもちゃんと顔まであるし……」
「ある意味すごい器用じゃない?」
「これ一人で黙々と作る恋宵先輩って想像したくないんですけど」
「みんなどしたの? どんどこめしあがれー」


上機嫌に笑う恋宵の脳内では一体なにがどのように展開されているのか、知ってみたいような絶対に知りたくないような複雑な気持ちで、なにも食べないうちから胸が一杯な直姫であった。

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