ONLOOKER
(あれ……? 今なんか、光ったような)
若葉が混じる中、これが最後とばかりに存分に咲き誇る桜の花の中で、何か瞬間的な小さな光が見えた気がしたのだ。
(……まさかな、)
光の加減か、北校舎の窓からの反射か、それともただの気のせいか。
直姫は特になにも考えずに、立ち上がった。
革靴を履いて、ござの上から芝生へと踏み出す。
細い葉が揃った上に桜の絨毯まで敷かれていて、それはそれは歩き心地が良い。
一人ふらりと立ち上がった直姫を夏生がちらりと一瞥した。
真琴が声をかける。
「直姫?」
「ちょっと……散歩?」
「散歩?」
「うん」
いってらっしゃい、と最後のタコウインナーを口に放り込みながら、真琴は手を振った。
北校舎と東校舎を繋ぐ渡り廊下の窓の下、桜並木の端まで来ると、木の幹に板がかけられているのが見えた。
近付いてみると、木の種類や植えられた年やらが書かれている。
直姫は、真ん中のソメイヨシノにも同じようなものがかけられていたことを思い出した。
だが、あちらの方がずっと古そうなのに、こちらの板の方がずいぶん傷んでいる。
日付は十五年ほど前だが文字は擦れたようになって消えかけているし、板を結びつけている縄はぼろぼろになって、今にも切れそうになってしまっていた。
木そのものは、高さはないが枝も太くて立派な木だ。
鳥でも住み着いて板をつついているのか、と考えて、直姫は地面を見下ろした。